パリの王冠 - エッフェル塔
Story behind the photograph

パリの王冠

The Crown of Paris

写真の裏側にあるもの

初めて訪れたパリ。見るものすべてが新鮮で、放っておけばただの記念撮影的な表現になってしまいがちです。しかし写真家としては、その都市ならではの特徴を色濃く表すものを見出したり、まだ誰もやっていない表現を模索することにこそ楽しさがあります。

パリ滞在中は、ほとんどの移動を自転車で行いました。ゆっくりと街を走りながら、肌で空気感を感じ取るようにしたのです。そこで暮らす人々の表情や街の佇まいから、彼らが胸の内に抱く「パリ市民としての誇り」を感じ取り、それをなんとか一枚の作品として表現できないかと模索し始めました。

紋章と王冠のインスピレーション

パリ市には中世から続く公式な紋章(シールド)があります。その紋章の最頂部には、金色の「城壁冠(Mural Crown)」と呼ばれる、城壁を模した王冠が掲げられています。

歴史を紐解くと、かつてナポレオン一世がパリを「第一級都市」に指定した際、この城壁を模した王冠を紋章に公式に授与したという史実を知りました。この「パリと王冠」という深い結びつきをテーマにした作品の着想を得たのは、日本への帰国前日のことでした。

エッフェル塔が戴く光の王冠

街の壁にある城壁冠のレリーフなどをただ撮影するだけでは、パリの持つ華やかさや、人々の誇りは十分に表現できないと感じていました。

パリの象徴であるエッフェル塔をじっと見つめているうちに、夜空をくるくると回転するサーチライトの光跡が、天に浮かび上がる光の王冠のように見えたのです。「これだ!」と直感しました。

王冠としての美しさを表現するにはどうすればいいか。試行錯誤を重ねた結果、カメラを固定しインターバル撮影を行い、サーチライトの光跡を幾重にも重ね合わせる(比較明合成)という方法にたどり着きました。そうして、エッフェル塔が光の王冠を戴いている姿が完成したのです。

パリへの感謝を込めた表現

なぜその表現でなければならなかったのか。それは、ただの技術的な面白さではなく、自分の足で現地を巡り、パリの人々の誇りを感じ取った先にたどり着いた必然の答えでした。

滞在中に起きた素晴らしい出来事や出会いを思い出しながら、パリという都市への感謝をこの一枚に込めています。それは、技術の誇示を超えた先にある、伝えたい想いが導き出した必然の表現なのです。